触ることからはじめよう
by skyalley
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孤立しない勒(つよ)さ
那須の黒磯に暮らす妹と父を 先日娘と孫息子と共に訪ねました
20日に誕生日を迎える父を祝うためです

住所に「大字」がつくほどの鄙びた土地
妹の知人夫婦を頼って引っ越したのは5年前でした

東京生まれ東京育ちの二人が山里での四季を数回経験したころ
ようやく日常の暮らしの要領がのみこめたようです

私たちが過ごした半日の間に何人もの方が訪ねて見えました
何かを手作りされる特技を持った感じのよい方ばかりです

独学でパンづくりを身につけ パン屋まで開いてしまった妹
読書や料理 陶芸 染織などさまざまな趣味を持っている妹

身内を褒めるのはみっともないことだけれど
彼女の探求心や向上心やもてなす気持ちがあったればこそ

あんなに人里離れたところででも孤立することもなく
温かなひとの環を築いてこられたのだと納得させられました

20年近く透析を負っている80歳の父
紅葉の始まった黒磯を 安心して離れてくることができました

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    妹がパン屋を営む自宅  
    A TABLE(あ たーぶる:フランス語で「ごはんですよぉ」)
    那須町大字高久乙1450-141
    tel/fax : 0287-78-6153 
by skyalley | 2006-10-28 20:17 | ひと
人生の収穫の味

知り合いに二十代で設計した通りの人生を
そのまま悠々として歩み続けていらっしゃる方があります

建築会社社長として都内に務めているあいだの趣味は
漢字の勉強
机という限られた世界の中で
漢字の無限の世界を愉しんでおられました

設計通り50歳で息子に社長職を譲り引退されると
漢字について調べた厖大な量のノートを潔く閉じ
長野県山中に建てておいた別荘に生活の本拠を移し
長年の夢だった薬用酒作りに着手されました
今ではその土地の人が
特別な実や菌類の在処を訊きに来るくらいだとのこと


先日お弟子さんのお一人 野地桂子さんと書の勉強をしていたとき
彼女の携帯電話がなりました
とても恐縮されて電話を切ろうとされましたが
画面を見られて「あっ!」とおっしゃって部屋を出られました
何でも親戚の方からの緊急の電話とのこと
その方は会社を引退されてから北海道の里山を購入され
ご夫婦で念願であった果樹園栽培をなさっているのだそうです
収穫を桂子さん宛に送ったので手違いのないように
という知らせを受けたとのことでした

こちらも悠々自適
北の地の愉しみが作りだした秋果はどんな味がするのだろう と
想像しながら桂子さんの話を伺いました

それから数時間後
夜の受業の前にオットと食事をしていると玄関に訪れる人がありました
少し開けたドアの間からまず見えたのは
籠にきれいに盛られた果実
そして桂子さんのお顔
「お食事中でしょう お邪魔して申し訳ありません
見場は悪いけれど 香りだけでもお届けしたくて・・・」

桂子さんはそうおっしゃるとすぐに帰って行かれました

ときおり山を降りてこられる知人から頂く薬用酒の
さまざまな色合いを光にかざして見るときのように
頂いた秋果にも実った人生の味わいを感じました
孔子の『論語』にある 四十にして惑わず 云々の暮らしを
本当になぞらえることの叶った方達から頂いた
こころへの福でもありました

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by skyalley | 2006-10-27 11:19 | ひと
手編みの靴下
先日妹に会ったとき
両手におさまるほどの 
かぁるい包みを手渡されました

出てきたのは毛糸の靴下
23年前に亡くなった母が
当時生後3ヶ月であった私の娘のために編んだ一組です
その娘もおかあさんになり
6ヶ月になる孫息子に 
その靴下は
今 
ぴったりです

孫息子にとって初めての冬が訪れようとしています

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by skyalley | 2006-10-25 10:07 | 父・母
ぶつぶつ交歓会 
明日21日土曜日
「ことばの教室」前で
「ぶつぶつ交歓会」を開きます

これ いいな
どうしようか
うん 頂こう
ぶつぶつとこころの中につぶやく
そして
これとこれを
とりかえっこ
しましょうよ
というきもちが交わせたらうれしい

そんな集まりです
ご自宅でご不要になった品をお持ちより下さい
不良品は避けましょう
私には不要だけれど
だれかにとってはうれしい物
そんな本・服・日用雑貨をお持ち下さい

値段はすべて100円均一とします
こどものおもちゃなどささやかな物は
50円でもかまいません
でも できるだけ金銭授受を避けて
お互いの あぁ よかった! というきもちのやりとりを優先したいと思っています

初めての試みなので細かいことは集まった方たちと話し合って
折り合いのよい方法をいっしょに見つけていこうと思っています
正午から始めるので出品希望の方は11時頃においでください
それ以降でももちろんだいじょうぶです
見物だけでも歓迎です お立ち寄りください 

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     明日はここがどんなことになるのやら たのしみたのしみ!
by skyalley | 2006-10-20 12:25
『星の王子さま、禅を語る』
書の稽古の前に高橋睦美さんが
「こんな本 読みますぅ?」と一冊を鞄から出されました

本の表紙にはあの「王子」が
何と袈裟姿で
それもハンカチならぬ杖を手に立っている!
それを目にした他のお弟子さんたちもびっくり にっこり

何でもだいぶ前に近所の図書館でその本を見つけ
感動のうちに読み終えた睦美さんは
一冊買おうとしましたがた残念ながら絶版ということを知り
結局170頁近くの一冊を丸ごとコピーし
自分で製本し愛蔵してきた本なのだそうです

日増しに秋深まるこの頃
ニュース番組に行楽地へのいざないが加わるようになりました
秋桜や珍しい秋草の盛りに集まる人々を画面に見ながら
今夏 友人を訪ねて家族で山中湖へ行った折のことを思い出しました
避暑地に特有のさまざまな店が建ち並ぶ街道を車に揺られていたら
突然視界が開け 一面の花畑が現れました
多くのひとが花の間を散策し 所在なげに立ち止まると
花に囲まれて写真
花を背景に写真
花を前景に写真・・・

人工的に仕切られた場所で人工的に並べて植えられた花々に
どんな愛着が湧くのだろう と
とても薄気味悪く思ったものです
テレビの画面に映し出された光景を見たときも
同じような何とも言い表しがたい心地悪さを感じました

原作ではこの地球に来た王子さまが
自分の星に残してきたただ一本のバラと同じ花が辺り一面に咲いているのを見たとき
「草の上につっぷして泣きました」
「この世に、たった一つという、めずらしい花を持っているつもりだった。ところが、じつは、あたりまえのバラの花を、一つ持ってるきり」ということに気づいたからです
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するとキツネが現れて
友だちを探しているという王子さまに向かってこう言います
「人間ってやつぁ、いまじゃ、もう、なにもわかるひまがないんだ。あきんどの店で、できあいの品物を買ってるんだがね。
友だちを売りものにしているあきんどなんて、ありゃしないんだから、人間のやつ、いまじゃ、友だちなんか持ってやしないんだ」

睦美さんの愛蔵書『星の王子さま、禅を語る』の作者・重松宗育さんは1943年静岡県生まれ
大学で英米文学を講じ 海外への禅文化の紹介に努めている僧侶だそうです
この王子さまとキツネの場面から
作者は禅の色即是空(平等)と空即是色(差別:しゃべつ)を説きます

森羅万象においては すべて相依相関で 
それだけ切り離して存在できる絶対の個ではない(平等)
そのような者同士が時間と忍耐を費やして
絆を結び心を通い合わせたとき
互いがかけがえのない個に変わる(差別)
平等と差別は紙の表裏のように区別はできるが
切り離しては存在し得ない

『星の王子さま』は開くたびに新たな感銘や発見の甘露を約束してくれる一冊です
睦美さんのお陰で
馴染みであったはずの話を禅へのてがかりとしても新鮮に味わうことができました

印刷され世に数多くあったはずの『星の王子さま、禅を語る』の本は
睦美さんが労を厭わずてまひまをかけて一冊創ったことで
みんなの本でありながら
彼女だけの本となったわけです

キツネにたいせつなことを教えてもらった王子さまは
もう一度バラの花を見にいきました。そして、こういいました。
「あんたたち、ぼくのバラの花とは、まるっきりちがうよ。それじゃ、ただ咲いてるだけじゃないか。だぁれも、あんたたちと仲よくしなかったし、あんたたちのほうでも、だれとも仲よくしなかったんだからね。(中略)」
そういわれて、バラの花たちは、たいそうきまりわるがりました。

原文には 
  Et les roses etaient bien genees. とあります
genees は embarrassed と同じで
窮屈な 気詰まりな、ばつの悪い、きまりが悪い という意味です

そうか 「きまりわるい」 か
山中湖で見かけた人口花畑や
テレビの画面で見た名所の花畑とそこに嬉々として集う人々の様子から感じた私の気持ちは
きまりわるがっているであろうバラを見ることの
きまり悪さだったんだな 
探しあぐねていた言葉がみつかったのも
睦美さんが貸してくださったこの本のお陰でした

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            睦美さん愛蔵の『星の王子さま、禅を語る』
by skyalley | 2006-10-18 12:01 | ひと
『ふふふ』

受業の合間にBOOK OFFへ自転車を飛ばしました

「¥105」と大刷りされた棚でこんな本を見つけました

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作者
書名
背表紙の色合い
装丁
掌の大きさ
紐付き
そして価格
わたしにとっては申し分なしの一冊です

2001年から5年まで
「小説現代」(講談社)に連載された3頁ほどの話が約50篇集められています
前書きも後書きもありません

すぐに買うことにしましたが確認のため本の裏を見ると750円の値札
105円ではないないようです
近くの売り場で在庫整理をしていた店員に事情を話すと
「きっと取れてしまったのでしょう」といとも易々と
手近にあった器械でカシャッと値札を換えてくれました

勇んで帰宅しオットに嬉々として今日の釣果の話をしました
「あんなに簡単に750円の物を105円にしてしまって大丈夫なんだろうかね」
とお節介に訝るわたしに
オットは「どうみても105円の値打ちだったんじゃない?」

あ そういうことね
店筋や場所柄からしてその価値ということか
なんともありがたいことです
こんなことがあるから40年来の古書店巡りは止められません

因みにそのうちの一話「作家のあだ名」を読んでみました
読了後書名通りの文字がみっつ
胸の中に洩れて踊りました

             

    

                   
by skyalley | 2006-10-14 13:03
猫はすでに
今年夏の初めから五十肩を患っています
時間はかかるかもしれないが必ず治る ということなので
50年分の肩胛骨を中心とした肩の疲れ・壊れに
ゆっくりじっくりつきあってみようと思っています
この3ヶ月あまりで 
こちらへ動かすと瞬時にしゃがみこんでしまい
しばらくは声もでないほどの激痛が走る とか
同じ「こちら」でもこのようにしてから動かすとけっこう問題なく回せる など
ようやく右肩とのつきあい方がつかめてきたところです

今朝 しばらくぶりにラジオ体操をしてみました
毎日午前9時か正午か午後3時のどれかをしていましたが
肩を患ってからは左側だけでも と思っても
右からの痛みが伝わってとても愉しめる状態ではなかったので見あわせていました

快晴の空を見ていたら放送が始まり
ふらふらと立ち上がって準備体操をしてみたら
少しですが右肩もよろしいよう
左肩は問題なく動かすことが出来ました
よしよし と本番の体操第一を始めると
おやおや おもしろいことに今までにしたこともないような動きをしています
小学校からよく体得しているはずの体操なのに首を傾げる有様
そのうちに体は止まってしまいました
両腕が連動していたから 
考える必要もなく体が自動的にこなしていたラジオ体操だったらしいのです
放っておくと左腕はどんどん不思議な動きを始めました
第二は諦めました

おかしなこともあるものです
でもそのようにできているのかもしれません

気分はさわやかだったので
日課(のはず)のデスクペンによる線書き練習をすることにしました
が 久しぶりに体操という大きな動きをしたせいか
すぐに右腕が疼き出したので無理をするこたぁない
とこれも途中で止めて
次の作業 英文の禅の言葉を清書することにしました
古今東西の禅師の言葉を一日一語読みましょう 
という趣旨で編纂された『365 Zen』から
適当に開いたページを書き出しているのですが
右手を庇って今日はできるだけ短い言葉を探してみました

Sitting motionless,
Nothing happening.....
Spring coming,
Grass growing.....


Soiku Shigematsu, trans., A Zen Forest



座禅を組む
何も起らない
春は巡り
草は伸びる


たったこれだけ
たったこれだけの言葉で一瞬のうちに
五十肩になって日常のさまざまに変化が起きていること
40年してきたラジオ体操が急にできなくなったこと
それらのことは
いいの
たいしたことではないの
しぜんなこと
やがてときはめぐってくるのだから
むりをしないで
からだのしぜんにまかせて
まかせたこころにまたまかせて
ちからをぬいて
そのまま
そのまま・・・

そんな応えが還ってきたように感じられました
もっとも禅師はどんなつもりで語ったのかは知りません

というようなことを器械に向かって
考えては書き 書いては書き直しているわたしの背中で
猫のヨシダはスズキの耳掃除をしています
耳掻きを使わないからね 
どうやったって届かないんだ 耳穴

それからスズキ禅師 ヨシダ禅師の姿になりました

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こともなし
by skyalley | 2006-10-03 12:35
みどりごが育む共同体

先日 遠く兵庫県川西市にお住まいの友 
下西眞美子さんから電話を頂きました

「ご病気なのか・・・
それともフランスにでもおでかけになられたのか・・・
ずっとブログの更新がないものだから
お元気ならいいのですが・・・」

元気も元気
とても元気です
なぜなら孫息子のちょびラが一週間滞在している間に
彼から生きる活力・姿勢・情熱をずっと吸い取っていたからです

彼はほぼ二週間おきに横浜から母親と共にやってきますが
今回の滞在中の彼の生長ぶりにも
ますます目を瞠るものがありました

目に映った物に手を伸ばすとそれに触ることができることを発見!
四つん這いになって揺すると体が前後することを発見!など
身体的な大発見をすでに経験していましたが
そんな一瞬一瞬にこちらが立ち会って
「すごいねぇ!」「できたねぇ!」
と声を掛けるととても誇らしげに体を反らせ
表情だけでなく体中でよろこびを表すようにもなりました

また
振り向きざまに笑いかけられることはとても昂奮をそそることや
こちらが笑いかけるタイミングをわざと早くしたり遅くしたりしてずらしてみると
わくわくしながらじっとその瞬間を待っていることなどなど
微妙な感情のやりとりも実感できるようになりました

それにしても
とわたしは思いました

それにしても 
人間とはすてきないきものだな と
働きかけるとそれに応えようとする力を
生まれながらにして無限に蓄えているいきものなのだな と

毎日の少しずつの生長ぶりを飽かず観ていれらる仕合せに恵まれながら
わたしはその一方でまたこんなことも思わずにはいられません

ちょびラはお陰様で先日生後5ヶ月を無事に迎えました
彼と同じ日数を暮らしてきた赤さんたちの中には
この5ヶ月間に
無視され続け
放置され続け
あるいは虐待をされ続け
すでに癒しがたい心身の傷を追っているいとけない者がいること

それを思うと胸が塞ぎます

がある日 ちょびラの母ももが誰にということもなく言いました
「あ〜あ 仕合わせだね
いいのかね こんなに仕合わせで
いいね
仕合わせでないひとの分もしっかり仕合わせでいよう
ね ちょびラ!」

仕合わせというのはどこかで準備されているものとはちがいます
自分で仕合わせになろうとしなければまずそうはなりません

ももは婿さんと共に
この5ヶ月どんなにかちょびラとの暮らしを愉しくしようと努めてきたことか
おっぱいをあげるときには必ず「おいでませ〜〜」と呼びかけることから始まり
常に話しかけ 笑いかけ 語りかけてきました
彼らの間にできた環に周囲の者も陶然として巻き込まれていくのです

ちょびラが私たちの家に帰ってくるのを
友人もお弟子さんたちも皆楽しみに待っていて下さいます
そして彼に語りかけ 笑みを返されると
誰でもが一様に「あ 笑った!」と声をあげます
たったそれだけのことに誰もが和み 
生長しようとする好奇心に溢れるその姿勢に
実はとても励まされてきたのだと思います

わたしは心配そうに恐る恐る電話口に現れた下西さんに
心から謝りながらも
「ちょびラに見入っていました」と告白しました
元気ならいいのです とほんとうにご休心下さったあと
彼女からこんなメールが届きました

 
    いらぬ心配をしてしまいました
    とても愉しい様子に安心するやらうらやましいやら・・
    日々 何かが変わってゆくんですものね
    同じ今日は無いんですから 
    見入ってしまうのも無理はないのかもしれません
 
    年を重ねても同じ事
    心して暮らさねば と気付かされました


孫はかわいい などという血縁の中で括ってしまうことではなく
新たないのちを迎えること
そのいのちとの誠実なやりとりを通じて
直接間接の刺激を受けて社会は和み潤い勇気づけられていくのだという基本的なことを
ちょびラに教えてもらいました

84歳の日本エッセイストクラブ理事長の村尾清一さんからも
「生きていますかぁ」という伝言を電話に頂いてしまいました
事情を話すと

「戦前の三高の学生達は僕達のようにもうみなお爺さんになっているでしょう
 その仲間に人生で最も幸福を感じたことというアンケートを採った男があるんだ
 彼が学士会で結果を言うのに
 一番が三高の学生というエリート校に入学できたこと
 二番目が恋人を初めて抱いたこと
 そして三番目が孫の笑顔に出会えることだと言うんだな
 ぼくもそれに同感だ
 ま あなたもそういうことなら
 しばらくは孫に溺れていなさい」というお話と温情を頂きました


この秋 二人の知人にもそれぞれ孫息子が誕生しました
楠人(くすと)クン
瀬名(せな)クンだそうです
こころの品格差が引き起こす胸塞ぐ事件の多い時代
新たないのちを中心に健やかで仕合わせな共同体が
あちらにもこちらにも育っていくことを願わずにはいられません

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by skyalley | 2006-10-02 13:28