触ることからはじめよう
by skyalley
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 de Luxe


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こどものころ
母の鏡台にいつもあった

乾物屋の奥さんとして
母は
朝もはよから煮豆や昆布巻き作りに精を出していた
化粧などまったくしなかったから
鏡台の引き出しの中は
頂き物のコンパクト
からからに乾いた粉
先が埃を被った刷毛
そんな物しか入っていなかった
それでも
その瓶は鏡台の上にいつもあった

なんてきれいなんだろう
色も
字も
模様も
外国語なんか知らなかったけれど
de Luxeの意味をその書体が教えてくれた
こんなにすてきなものがあるんだ
世界ってすてきだな
こどものわたしに
そう思わせてくれた

その蓋に指の先を這わせて
文字や意匠の凹凸を
ていねいに
少しずつ
なぞるのが好きだった
なぞり終えると
きれいになったような気がした

今は吐くほどの化粧品が出回っている
私も化粧はしないけれど
その瓶を購めて使っている
別の会社製のさらさら液と混ぜて
ちょうどいいクリームにして使っている

今でも毎朝
すてきだなと思う
by skyalley | 2007-02-14 18:20 | 父・母
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