触ることからはじめよう
by skyalley
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やりとり成立

きのう花屋さんへ行ったとき
隣が開店前だったので私はその店の前に自転車をとめた
30分ほどして用事を済ませて外へ出たとき
開店準備をしている店主らしき人に気づた
私はすぐに謝った
 「あ ごめんなさい 邪魔でしたね」

ここで彼が私を振り返らなくても
一瞥をくれても
無視しても私は驚かなかったろう
本に首を突っ込んでいることが多く
テレビを観ず 新聞を取っていなくても
世の中がぎすぎすしているのは私にもわかる

果たして
彼は応えて言った
「いいえ いいですよ ごゆっくり」

「いいえ」だけでも十分なのに
「いいんですよ」
その上に「ごゆっくり」と来た
なかなか言えるものではない
あなたはおっしゃいますか
言わなくても構わないけれど
私はたいそううれしかった

開店準備に忙しい彼 さて何の店なのか
自転車を移動させながら
あらためて硝子越しに店内を見ると中古cdとレコードの店だった
私は急に彼に尋ねたくなった
「あの 井上陽水の奥さんて誰でしたっけ」
「あぁ 石川せり かな」
「あっ そうだった そうだった! 
 店に行くといつも名前が思い出せなくて・・・
 あのぅ  武満徹の作品を集めた彼女のcd ありますか」
「あぁ ありましたね そんなの 確か黒いジャケットだったかなぁ 
 でも今は無かったなぁ」
話しながら彼の中に入っていく彼に
私は自転車をもう一度止め直して店の中に入った
彼はカウンターの上に分厚い本を開き
私が探しているcdは「翼」という題だということを調べてくれた
ずっと前にオットがどこからか入手して贈ってくれた
とても愛聴していたのに 
誰かに貸してしまい そのまま返ってこないcdのうちの一枚だ
「もしみつかったら知らせてくれますか 急いでいないので」
連絡先を記していると 
視界にbette midlerのexperience the divineが飛び込んできた
「あぁ これ 大好き」と言うと彼は
「いいですね 僕も大好きですよ どれか聴きましょうか」
そう言ってパッケージから出して私の返事を待っていた
私はthe roseを選んだ

ようやく朝日の差し込んできた小さな店内
私の侵入のせいで彼はまだ店の看板も出していない
二人でthe roseを聴いた

it's the heart afraid of breakin'
that never leanrs to dance
it's the dream afraid of wakin'
that never takes the chance
it's the one who won't be takin'
who cannot seem to give
and it's the soul afraid of dyin'
that never learns to live

こわれることを恐れる心は決して踊ることを学ばない
目ざめることを恐れる夢は決して機会を手に入れない
取ることをしないひとは与えることをするとはいえない
死ぬことを恐れる魂は決して生きることを学ばない


彼は「う〜〜ん いいですねぇ」
急に急いでいたことを思い出した私は
店のカードと彼の名を求めた
「じゃ お願いします」と言って外へ出ようとすると
彼 大門さんは「今日はbette midlerで行こう!」と微笑んだ

私は ぐん と自転車をこぎ出した

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小田急線経堂の花屋「花政」さん と 
お隣のHUSKY RECORDS
by skyalley | 2007-02-08 23:23 | ひと
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