触ることからはじめよう
by skyalley
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トランク一つで出直す


巴里に暮らす友から電話があった
携帯電話では名乗らないが
家の電話だったので 「はい 高橋です」と事務的に出たら
「う〜い〜〜 まだむ た〜か〜は〜し〜!」と返ってきた
「まり・ぴえ〜〜〜る〜〜!!」


この半年の間に
私は家の電話 携帯電話の番号
そしてメールアドレスを変えざるを得ず変えていた
そのことを ふだん手紙のやりとりだけで交信してきた彼女に
伝えていなかった ということを忘れていたのだ
時間を作り ゆっくり便りをしようと思っていながら
延ばし延ばしになり ようやく先日 手紙を書いた


びっくり! 奇跡! 生きていたのね!
そんな書き出しの返事がすぐに返ってきた
メールを出しても 電話をしても 音信不通だったので
てっきり引っ越してしまったのかと思い
こちらも手紙を出さぬままでいた
よかった また繋がった!
28日に電話するから 待っていて
そう書いてあった


そして予告通り掛けてきて 一気に喋った


最愛の人をと3年前に死別したことの喪失感
死亡に伴う不動産関係の事務的・経済的な問題
仕事の上でのつまづきから生じた経済的な問題
それらをすべて克服した
新たな一歩を踏み出すために 家中の全ての物を売り払って
トランク一つで新しい人生を踏み出すところ


今 箪笥やベッドなど大きな家具に売値を書いた札を付け終わった
これから小物と格闘する
巴里市内の新聞に公示し
一週間 家を開放し 買い手を募る
そして6月末には この34年間住み慣れた家を出て行くの
自分でも信じられないけれど
とてもせいせいとした気分


目標はトランク一つよ
どこへ引っ越すのか全く決めていないの
ここを出るなんて とても不思議な気分
でも楽しみでならない
わかったら住所を知らせるから
そちらの様子も知らせてね


私が相づちを打つと それを遮るようにして
「やっぱり いいわ ユキコと話すのは やっぱり いい!
いっぺんに話したら勿体ないから また掛けるわ」
そう言って 再びの繋がりを喜んでくれた
来週の水曜日に また掛けるから
そう言い残して 笑いながら電話を切った


彼女のアパルトマンにオットと共に
あるいは一人で 幾度泊めてもらったことだろう
軋む廊下の木の床
こじんまりと機能的で清潔な台所
シャンパンからバンドエイドまで 有機的に収納された物置
地方都市から出てきた彼女が
結婚し二度目に暮らした住まいだった
息子が独立し 娘が独立し 夫が旅立ち そして独り暮らしとなった
部屋のあちこちに見られる彼女らしさを写真に撮った
東京に帰ってから その暮らし方 生き方を真似した


マリ・ピエール・パイヤール
もうすぐ65歳
尊敬する彼女が
巴里で
今も
人生を織っている



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by skyalley | 2010-05-29 22:24 | ひと
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