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それぞれに 名のりて 出づる 若芽かな 千代女 花曇りの朝 出がけに いつものように 玄関で確かめる 「携帯は? ハンカチは? ・・・?」 「あ 携帯! 部屋のストーブの上」 自室で復習をしながら 少し経つと席を立ち 盛んに「わからない」を繰り返す 何がわからないのか と尋ねると 「タンパク質はアミノ酸になります って読めばわかるんだけど じゃ アミノ酸は何 って 次々にわからないことが出てくるのよ」 「それは わからない じゃなくて 知らないんじゃないの?」 「ま そうなんだけどね」 「ノート 取れないのよ」 とも言ったことがあった 学生時代はどうしていたのかと訊くと 学生の時も 仕事の時も 取らない 取れない 大切なことを全部覚えていられるということか と訊くと 「覚えてられないけど 忘れることは あんまり大事なことじゃないんだな と思ってさ」 ヘレン・ケラー学院の教室には幸か不幸か黒板は無い 中途失明の人が多いので 黒板は用をなさないのだ みな録音機で 講義を採録し 活用する 形から入るの大好き のオットも さっそく性能のよい録音機を入手 自宅で聴き直している様子はないけれど 彼の勉強の仕方も おもしろい ほとんどインターネットに向かって あちらの情報 こちらの情報を収集し まとめて印字して おしまい 覚える という作業は無し 文字を全く書かない アナログ一辺倒の私から観ると これからどうなっていくのか とても興味深い 登校4日目 見送って 孫息子と散歩に出ようとすると電話があった 「教科書 忘れちゃった! 机の左端に乗ってるでしょ」 孫を娘に託して自転車で駆けつけると にこにこしながら戻ってくるオットの姿があった 明日からは 今までのように 仕事に必要な物だけではなく 教科書や参考書などの忘れ物も確かめてあげよう 物みな 芽吹く頃 先日 砧公園でまだひっそりとしていた菩提樹の梢 オットを思った
by skyalley
| 2009-04-14 12:38
| うちのひとびと
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