触ることからはじめよう
by skyalley
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暖簾の仕事


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永いこと銀座で仕事をしてこられた80代の知人からの話
渋谷に食事に出たが まったく昔と変わってしまったので
とりあえず暖簾が出ている店を遠目にみつけて 友人と入ろうとした
ところが店の前にまで来たら 「支度中」と書かれた木の札が掛かっていた

「暖簾が暖簾の仕事をしていないんだよ
 これじゃ 中の人間も仕事をしていなさそうだ と思って
 仕方なく また別の店に行ったよ
 気をつけて見てみると そんな店が多いんだ
 銀座じゃ そんなことなかったがねぇ」

乾物屋を営んでいた両親は 毎朝夕 暖簾を出し入れしていた
学校から帰る途中 大きめのハンカチ大の白木綿を繋いだ暖簾が
風にはためいているのを 遠くから認めて 「あ 私のうち」 と
なんだか いつでも うれしくなったものだ

それが駅近辺にマーケットが出来るようになると
シャッターという重く 鬱陶しく うるさく 風情のない代物に変わった
シャッターは遠目では見えにくいから 開店なのか閉店なのか
店の真ん前まで行かなくてはわからない

私は暖簾が好きで これまでも 家の中のあちこちに
骨董市でみつけてきた布で作った暖簾を掛けてきた
が いつかは 教室が開いている ということを知らせるための
外用の暖簾を欲しいと思っていた

先日 教室の模様替えをしていたとき
夏用の座布団掛けが必要になった
骨董店に行ったときに 店主に訊いてみた
訊いてみるものだ

店主は 「よく訊いてくれました
 去年も売れ残って 毎年そんなだから
 今年はもう蔵にしまったきりにしてあるのが あるんです
 近いうちに持ってきますから」 と喜んで下さった

果たして 後日訪ねてみると
期待以上の品が目の前に用意されていた
一反の倍 一匹(24メートル) まるまるの手つかず
掛け紙がついたまま 色焼けもない 浅黄の本麻の縮

店主が提示して下さった値は
コノヨの物とは思えないほど温情に包まれていた
座布団を作っても まだまだ余るので
早速 うきうきと三枚はぎの暖簾を作ってみた

早朝 庭仕事を終え 家の仕事を終えてから
教室を始める前に出して
一日の受業が終わったときにしまう暖簾ができたことで
日々にまた愉しい彩りができた

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骨董店の村瀬さん
おかげさまで みなさんに好評です 誰より 私に好評です
素晴らしい布を大切に取っておいて下さって
ありがとうございました

忙しい仕事の合間に
黒竹を用意し
暖簾を掛けやすいようにして下さった佐野商店庭師の徹君 
ありがとうございました
by skyalley | 2007-06-05 23:15 | 父・母
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