触ることからはじめよう
by skyalley
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「それは幸せだった」

新宿の紀伊國屋サザンシアターで開かれた
清水眞砂子さんの講演会「『ゲド戦記』の世界」を聴きにでかけてから
ちょうど一週間が経ちました
そもそも教室でいっしょに勉強をしている猪狩みきさんに誘って頂いた会ですので
受業に見えたみきさんとはもちろん
清水さんの講演会でのことを誰彼と熱く語った一週間でした

講演会にはご一緒できないのですが と仰って
お弟子さんの一人宮下満枝さんが
特集「夫婦のかたち」で紹介されていた清水さんの記事が掲載されている
月刊誌「婦人之友7月号」を持ってきてくださいました

宮下さんとの受業が終わると私は

  「夫婦 ふたりでつづる物語」
   結婚の形態が多様化する現在、
   私たちが「夫婦の関わり」に求めるものはどんなことでしょうか 

と題された4人での誌上座談会記事のうち
乱暴なことを承知で「清水」と太字で印字された言葉だけを
じっくりと拾い読みしました

清水さんが現在のおつれあいと会われたのは彼女が29歳のとき
60年代の終わり世界的に学生運動が盛んだった頃
清水さんは高校教師で運命の人は大学院で全共闘運動の渦中の人
大学闘争に遅れて起こった高校闘争が清水さんの在任校でも起こり
在籍の生徒達が処分された折
生徒側に立った彼女は孤立し翌春転勤をさせられます
そんな時 彼女は人づてにかのひとから「会いたい」と言われます

     私は人間不信になっていたので気が進まず、
     三〇分だけのつもりで会ったのですが、
     気づいたら延々十二時間話していました
     「まだこういう人がいれくれた。まだ人間信じられる」
     と思わせてくれたのが彼なのです


それからほど十年後に結婚されたそうです

     
     結婚したとき、私は彼に大変な年月を過ごしてきたのだから
     せめて三年間休んでちょうだいと頼みました。
     住所不定、無職、
     運動の中で作った借金が何百万という人間と結婚するのは
     すごく楽でした。
     地位や名誉やお金があったら、
     それにも目がいってしまうかもしれないけれど
     何もなければ、その人だけを見ていればいいので見誤ることがない。
     それは幸せだったと思います。



その記事の掲載されている頁の上に
「友人を訪ねて北欧を旅した折の清水さんとオットの菅沼純一さん」と題された
白黒写真がありました
私はほれぼれしみじみとお二人の姿を見つめました

そんなことを数日前に初めて知ってから
初めてお話を聴く機会に恵まれた夜でした
主催者の紹介を受けて講演壇上に歩みを進める清水さんを遠くに見ただけで
すでに熱くなっていた胸を押さえ
私は深々と息を吸いこみました


     何もなければ、その人だけを見ていればいいので見誤ることがない。
     それは幸せだったと思います。


節度を持ってこう言い切って憚らぬ清水さんの講演会は
まだ始まったばかりでした
by skyalley | 2006-07-02 12:14 | ひと
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