触ることからはじめよう
by skyalley
S M T W T F S
1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31
放射能が つながりを

3歳からの日本語の教室
「こども・ことば・ひろば」に通うお母さん方4人に
子供たちのお稽古の間に
以下の便りを読んでおいてもらい
お稽古が終わったあと
原子力発電所事故後の世界のこと
それぞれの今の気持ちなどを 
初めてみんなで話す時間を持った




「こども・ことば・ひろば」に通うご父兄の方々へ


仁奈ちゃん(4)仁乃ちゃん(2)のお母さん・真理さんから
メールを頂きました
 
以下私の返書を ご参考までにお読み頂ければさいわいです
真理さんへの返書ですので そのように書かれていますが
「こども・ことば・ひろば」へおいで下さっているすべての保護者の方々
また程度の差こそあれ 
現況にご不安を抱いておられるすべての方々への便りでもあります 

真理さんからも
「他のお母さん方にも是非送って下さい。
 私は皆さんに直接会う機会が少ないので
 先生のメールを通して気持ちが少しでも近づけたら嬉しいです。」
とご諒解を頂きました

      ‘’‘’‘’‘’‘’‘’‘’‘’‘’‘’‘’‘’

真理さんから

 遅くにすみません。
 先生 いつも私の話を聞いてくださってありがとうございます。
 なかなか自分の思っている事(放射能関連)を話せる友人が近くにおらず、
 先週に引き続き先生に話を聞いて頂いて すごく心が落ち着きました。
 小さな子供のいる親や保育園でも放射能に対しての考え方が全然違うので
 難しいです
 

      ‘’‘’‘’‘’‘’‘’‘’‘’‘’‘’‘’‘’


昨夜はメールをありがとうございました 
あれから2時半ころまで起きていましたので 
どうぞお気遣い無く


福島の原子力発電所事故は
大地震による炉心融解事故
事故後の政府や東京電力の対応の遅れや情報隠蔽など 
関係各所の自己保身が重なり合い
収束するどころか益々深刻化しています
この放射能汚染の惨禍を前に 
今 私達にできることは 何なのでしょう


同じ原理で作られ 
同じ言葉を冠した「原子爆弾」と「原子力発電」
片方には大なり小なりの拒否反応を示し
もう片方には何の疑いも持たぬよう騙され続け 
結果的に享受してきてしまった
この二つの現実が作る心の溝
放射能汚染という取り返しが付かないことを「しでかしてしまった」後で 
私達にできることは 何なのでしょう


この頃私は毎朝 暗澹とした気持ちと 
そして『それでも人生にイエスという』(v. e.フランクル)気持ちの
相反する両方を抱えて目覚めます
が 取り返しが付かないような事態にあって 
私ができること しなくてはならないことは
「それでも希望を失わず 最善を尽くす」こと
そしてその気持ちを少しでも多くの方と分かち合おうと努めること
そう自分に言い含め ベッドから出ます 


映画「ネバーエンディング ストーリー」をご覧になりましたか 
「無」が襲ってくる・・・・・・ 
あらゆるものをなぎ倒し「虚無」がやってくる 
それに立ち向かうことができるのは
夢や希望を抱く大人と子供でしかない
そんな話でしたね 


「風の谷のナウシカ」に象徴されるような汚染された世界 
それが現実となってしまった世界の中で 私ができることは 
「何をやってももうどうしようもない」という虚無感と闘い 
白いドラゴンに乗った「ネバーエンディング ストーリー」の
主人公のように希望を作るべく 闘い続けること 
日々そう自分を励ましています


私達が今 試されているのは 
虚無に対する強く明朗で賢い精神だと 私は思っています
そんな各自の孤独な闘いの中でこそ たとえば 
真理さんに私の気持ちを聴いて頂き 
話し合うことができることは 大きな希望の一つです 


実は 私達夫婦の親しい友人の一人は  
三月末 会社からも社会からも忽然と姿を消しました
余りのことに私は一瞬呆然としました


その彼から六月の始め どこからか突然電話がありました 
仕上がったばかりの『いくいりぶりあむ』をブログで知って
「是非一冊取っておいて欲しい」と言ってくれたのです
「違いを受け入れ 互いのよいところを活かし 双方が協力することで
 一人だったら望めなかったよりよい所へ 
 『いくいりぶりあむ』の哲学は 今こそ必要だと思った」
そう言ってくれました


どうしても避難しなければならない と考える彼 
そういう訳にはいかない と応えるしかなかった家族 
当初はその大きな対立を よき機会と捉えられず
一人自分の道を行った彼
その彼を元気づけることができたこと それだけでも
あの本を創った甲斐があったと 
彼からの電話にとても励まされ そして感謝しました


電話の間 
犬の声がしたり 川のせせらぎの音や 砂利道を踏む音・・・ 
日本のどこかにいるということ以外いまだにわかりませんし 
彼もそのことには全く触れませんでした
しかし 数ヶ月ぶりに聴く彼の声には曇りがなく 
健やかな心身の気配が伝わってきました


放射能汚染の為に 今や安全な食品は無いと言われています
水は? 土は? 空気は? 
汚染されてしまったという事実に
目を背けることはもう出来ません


しかし人間の精神は「人間不信」や「世界不信」という汚染から
何としても護る
特に子供たちの精神を護り
今こそ互いの違いを受け入れ 
互いの善いところを足したり 掛けたりしながら 
より善い人間性を 人生を 社会を 世界を
築こうとする精神を育むよき機会に と思っています


紫陽花の季節が終わりますね 午後は雨になるとか 
ご不安もさぞおありでしょう 私も同じです
でも
どうかご自身の ご主人様の そして
仁奈ちゃん 仁乃ちゃんの現在のために 未来のために
ご自身と闘うことを諦めないで下さい


よい週末をお過ごし下さいますように 
ありがとう 真理さん 

      ‘’‘’‘’‘’‘’‘’‘’‘’‘’‘’‘’‘’‘’‘’‘’‘’


この便りは現時点での私の考えであり行動です
みなさんの思いやお考えもお聴かせ頂き 
互いに信頼関係を築いていきたいと思っています


なお 文中の『それでも人生にイエスという』
(ヴィクトール・エミール・フランクル著)春秋社は
ナチス占領時代に強制収容所に入れられ 家族を殺され
生存者5%の一人として
戦後も精神科医・心理学者として活躍したフランクルの名著です


「それでも」の一語は
強制収容所という人類が考え得る最悪の状況の中でも
人間はその尊厳を失わずに生き抜くことができる 
という背景から題されました
今 一読をつとにおすすめ致します

                    
「こども・ことば・ひろば」主宰 高橋由紀子
by skyalley | 2011-06-28 01:44 | 一枚の葉を森へ(no nukes)
<< 人生は鮭半身 たとえ明日世界が >>