触ることからはじめよう
by skyalley
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『絵本 徒然草』橋本治



『古今集』のずっと後 鎌倉時代になって出来てきたのが
『新古今集』という和歌の集でな
ここに祝部成茂(はふりべのなりしげ)という人の

「冬の来て
 山もあらはに木の葉ふり
 残る松さへ峰にさびしき」という和歌が載っとる
冬の情景を歌ったもんだがよ、分かるだろ?

「冬が来て山も禿げ山になるぐらい木の葉が散って
 緑のまんま残っている松さえも 山の峰では寂しいぜ」
という、そういうこったよ

お若い諸君にゃ「だからなんだ?」だろうがな
まぁそんだけのもんだわ
そんだけのもんを「ああだこうだ」と
大の大人がより集まって論議をする訳じゃな

「大の大人がバカらしい」と思うのは勝手じゃがよ
逆のことだって考えてみろな

大の大人が
たかが冬の景色を歌っただけのもんを目の前にして
「ああだこうだ」と言っとったということはよ
そのたかが景色でしかないものを見る
見て感じる”自分の気持”ということを大切にしていた
ということだな

「大の大人がどうでもいい和歌の一字一句に目の色変えて」
と笑うのも勝手だが
それをしなければ自分の気持にウソが出るという
人間の根本に対して目の色を変えていた
ということも忘れて下さるなよ ということじゃな

「僕の言いたいことはそうじゃない!
 僕の気持が分かってない!」と言う前にだ
果たして自分は
他人に分かってもらえるようにキチンと
自分の気持を表現出来ているのかどうかも考えてみなされや
ということじゃな

大の大人が一字一句に目の色を変えるというのは
そんなことでもあるんじゃよ

自分の気持をキチンと表現出来てじゃ
しかもそれがオシャレにもなっておって
それで初めて”一人前”というのが貴族社会の常識でな

 
『絵本 徒然草』p.114 橋本治著 2005 河出書房新社



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午後 ようやく散歩の時間を作り砧公園へでかけた
小一時間歩いた後に
ケヤキが「空の路地」を織りなす下で
橋本治節を聴いた

夜の受業を楽しみに帰途についた
by skyalley | 2011-02-24 11:19
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