触ることからはじめよう
by skyalley
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31
 「 きいてるの・・・ 」


あるドキュメンタリー映画の中で
視覚障害者の一人が
美術の教材として 机に乗せられた粘土という未知の物にに対し
まず掌全体ですべての面に触れ
においを嗅ぎ 
舐めて
そして耳に近づけた


その場面が忘れられない


初めて出会ったモノに対して
私は五感を使ってそこまで関わろうとしているだろうか
目から得られる「情報」で
ほとんどわかったように思ってはいないか


90年代の始め
私のような器械音痴の者でも
自分のホームページを開こうとしていた頃だった
この器械を使って
器械ではできないことをしよう 
そう思っていた
そして 映画のあの場面から ヒントを得て
心でみて 体でさわろう  という趣旨を込め
WATCH + TOUCH  とサイト名を決めた
情報ではなく 五感を と


昨日の早朝 手紙を書いていた
目をこすりながら孫息子が静かに近づいてきて
私の膝に乗った


「これ なに?」 
硯箱の蓋の凸凹を手で触れながら 問うてきた
私は彼の手を取り 指で蓋に彫られた模様を川下からなぞっていった
「地面があるでしょう
 それから 木が 生えているでしょう
 この木の葉っぱはこっちとちがうね
 それからおうちがあって 太鼓橋の上を歩いている人がいるね
 颯太と 誰だろうね
 橋の下には川が流れているね
 この川は 山のずっとずっと奥の方から流れてきているんだよ」
彼は黙って 私に手を重ねている


おもむろに蓋を両手で持ちあげ
それを耳に当てた
「なにしてるの」
「 ・・・・  きいてるの ・・・・ 」


しばらくじっとしていた と思ったら
急に立ちあがった
「そうちゃん おしっこ」


 「 きいてるの・・・ 」_f0085284_15311225.jpg

by skyalley | 2010-05-19 15:31 | 孫息子・颯太言葉ノォト
<< その日のうちに便りを の風習 un homme heureu... >>