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あるドキュメンタリー映画の中で 視覚障害者の一人が 美術の教材として 机に乗せられた粘土という未知の物にに対し まず掌全体ですべての面に触れ においを嗅ぎ 舐めて そして耳に近づけた その場面が忘れられない 初めて出会ったモノに対して 私は五感を使ってそこまで関わろうとしているだろうか 目から得られる「情報」で ほとんどわかったように思ってはいないか 90年代の始め 私のような器械音痴の者でも 自分のホームページを開こうとしていた頃だった この器械を使って 器械ではできないことをしよう そう思っていた そして 映画のあの場面から ヒントを得て 心でみて 体でさわろう という趣旨を込め WATCH + TOUCH とサイト名を決めた 情報ではなく 五感を と 昨日の早朝 手紙を書いていた 目をこすりながら孫息子が静かに近づいてきて 私の膝に乗った 「これ なに?」 硯箱の蓋の凸凹を手で触れながら 問うてきた 私は彼の手を取り 指で蓋に彫られた模様を川下からなぞっていった 「地面があるでしょう それから 木が 生えているでしょう この木の葉っぱはこっちとちがうね それからおうちがあって 太鼓橋の上を歩いている人がいるね 颯太と 誰だろうね 橋の下には川が流れているね この川は 山のずっとずっと奥の方から流れてきているんだよ」 彼は黙って 私に手を重ねている おもむろに蓋を両手で持ちあげ それを耳に当てた 「なにしてるの」 「 ・・・・ きいてるの ・・・・ 」 しばらくじっとしていた と思ったら 急に立ちあがった 「そうちゃん おしっこ」
by skyalley
| 2010-05-19 15:31
| 孫息子・颯太言葉ノォト
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